#98 by yamaguchi / 2018.12.11
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【特別声明】 入管法改悪に反対する! 労働力確保のための杜撰な国会審議を許さない!

周知のように、安倍政権は唖然とするほど杜撰かつ拙速な国会審議で無理やりに12月8日、出入国管理及び難民認定法(入管法)改悪を成立させ、外国人労働者受入れ拡大のため新たな在留資格の創設を決めた。これまでは認められていなかった、いわゆる「単純労働」に従事する外国人労働者に対して門戸を開くというわけである。2019年4月の施行を目指し初年度は約48,000人、5年間で約345,000人を受け入れる試算となっている(11月14日発表)。

しかしその内容は一言でいうならば「労働者」「人」というよりも「安価な労働力」の受入れに過ぎず、外国人労働者の人権を守ろうという姿勢は露ほども感じられない。経済界の要請を受けたこの改悪により、今後多くの外国人労働者が過酷な労働環境の中で低賃金労働を強いられるのは明らかだ。重大な人権侵害も多発するであろう。加えて政府-法務省による外国人労働者の管理と支配が強化されるはずである。

これまで日本政府は専門的・技術的分野における外国人労働者に対しては「教授」「経営・管理」「報道」といった在留資格を認め、就労を許可してきた。一方、飲食店勤務やコンビニのレジ打ち、縫製作業などの非熟練労働に該当する在留資格は一貫して認めず、こうした「単純労働」に就労する外国人の入国は許可してこなかった。こうした非熟練労働(「単純労働」)に従事する外国人は「永住者」や「日本人の配偶者等」といった身分又は地位に基づく在留資格を有する者か、資格外活動を認められた留学生(入国管理局の許可を得た上で風俗業などを除く職種に限り就労時間上限週28時間まで)や技能実習生等に限られてきたのである。

だが、労働力不足が深刻度を増す一方で、ついに政府も非熟練労働に該当する在留資格を認めざるを得なくなったというわけだ。

今回創設された在留資格「特定技能(1号、2号)」は、次のように定義されている。

「特定技能1号」とは「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり在留期間は上限5年(つまり、5年を経たら帰国せざるを得ない)。家族の帯同を認めない。

「特定技能2号」とは「同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり在留期間は、個々の在留状況に応じ何回でも更新でき、最終的には永住許可の取得や日本国籍の取得も可能である。配偶者や子など家族の帯同も可能だ。

なお、「特定技能1号」による受入れ業種については以下の14業種とされている。介護業、ビルクリーニング業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船・船用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業。

やはりまずもって問題となるのは「特定技能1号」の非人道的な内容である。外国人労働者を5年間だけの労働力つまり労働機械としてしか見ていない。労働機械が日本に定住することなど許さないというわけだ。家族の帯同を許さないのも酷い。日本で就労したければ、家族離れ離れで5年間暮らす位は我慢しろというのである。

さらに許しがたいのはこの在留資格が悪名高い「外国人技能実習制度」と接合した制度設計であることだ。3年間の技能実習を修了すれば無試験で「特定技能1号」へ移行できるのである。技能実習修了生のおよそ半数が「特定技能1号」へ移行するとも推測されている。

広く知られた話だが、技能実習制度とは海外では人身売買と認識され、国連から何度も改善の勧告が出されている悪質極まる制度である。技術移転(「開発途上国」から受入れた技能実習生が日本で技能や技術、知識を習得し、将来母国でその技術を活用し母国の発展に寄与する)を通じた国際貢献を名目としてはいるが、実際には海外からの安価な労働力確保のための経路として利用されてきたのである。これは今や常識であろう。現在も多くの技能実習生が最低賃金前後の低賃金で長時間労働を強制され、逃亡防止のために在留カードやパスポートを取り上げられ、あるいは受入企業や監理団体の考え一つで自己の意志に関わらず強制帰国させられている。そのような奴隷制度と接合する在留資格などあってはならない。

また、この入管法改悪とセットになっているのが「法務省設置法」を改悪し、法務省外局として「出入国在留管理庁」を設置するという案である。同庁は1、「出入国管理及び在留の公正な管理を図ること」、2、「1のほか、1の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けること」、3、「2の任務を遂行するにあたり内閣官房を助けるものとすること」を目的としており、これまで存在した地方入国管理局は地方入国在留管理局の名称で同庁の地方支分部局として設置されることになる。つまり、外国人労働者のみならず外国人全体に対し出入国と在留の管理・監視が一段と強化され、その生活全体が法務省の支配下に置かれる。「外国人は煮て食おうが焼いて食おうが勝手」という政府-法務省の姿勢が更に露骨になるということである。

そもそも新たな外国人労働者受入れの前になすべきことはある。

第一に、66,498人いるといわれる(本年1月1日時点)「不法」残留者(いわゆるオーバーステイ)や、「不法」入国者、難民申請が認められなかった外国人等々の「非正規滞在者」を合法化することである。彼・彼女らの中には日本国内で強固な生活基盤を形成し、地域社会や職場で受入れられている者が数多く存在する。諸外国のようなアムネスティ(一斉合法化)の実施と言わずとも法務大臣の裁量による「在留特別許可」でこうした人々に正規の在留資格を認めればいい。一定の基準を満たす人々、すでに我々の隣人として社会で共に暮らしている非正規滞在者をまずは受入れるべきであろう。

さらに必須なのは、すでに国内で就労している外国人労働者の過酷な労働環境を改善し日本人と同等の労働者としての権利を保障することだ。外国人労働者を組織する私たちAPFS労働組合は結成から11年が経過しているが、未だに不当解雇や賃金未払、労災隠し等々の問題を抱えて駆け込んでくる外国人労働者は後を絶たない。日本人労働者であれば決して受けないであろう労働法違反に苦しんでいるのだ。今、ここにいる外国人労働者が職場で苦しんでいる実態をそのままにして新たな受入れを行えば、苦しむ外国人労働者をただ増やすだけに過ぎない。労使対等の原則を土台とした外国人労働者の人権擁護。この点こそ、法務省は厚労省とともに切実に努力しなければならない筈だ。

その上で、技能実習制度を速やかに撤廃し、管理強化ではなく多民族・多文化共生社会実現のための法整備を構築すること。「労働力・労働機械」としてではなく「人」としての外国人労働者受入れという原則に立って丁寧な議論を重ねることである。

外国人労働者は「人」なのだ。楽しければ笑い、悲しければ涙を流す「人」なのだ。私たちと何ら違わぬ存在なのだ。彼・彼女らの受入れを、こんな安易で無内容な国会審議で決めてしまったのは許されることではない。

APFS労働組合は今回の入管法および法務省設置法の改悪に断固として反対し抗議する!

(写真 当組合の主張が掲載されている本年12月1日付東京新聞)

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